第8章 一台の車と社会 / 43
エンジン車とEVを比べてみよう
同じ坂を上る二台。車輪に届く力は似ていても、その力を生むまでの道すじは違います。
疑問|静かな車にはエンジンが隠れている?
駐車場からすっと動き出すEV。エンジン音が聞こえないと、何が車輪を回しているのか不思議です。ここで比べるEVは、外から充電した電池の電気で走る電池式の電気自動車です。エンジン車は燃料を燃やすエンジンで走ります。同じ「走る」を、異なるエネルギーの通り道で実現しているのです。
問題|一つの長所だけでは選べない
静かさ、長い距離の移動、補給のしやすさ。比べる項目を変えると、見えてくる特徴も変わります。小さな車と大きな車を比べた結果を、そのまま動力源だけの違いとすることもできません。車の重さや形、外気温、走る道、乗せる人数をそろえ、何を比べているかを先に決める必要があります。
発明|エネルギーを回転へ変える二つの道
エンジンは燃焼で生じる高温・高圧の気体の働きを、機械の回転へ変えます。モーターは電流と磁界の働きで回転をつくります。電池はその電気を供給する蓄えであり、回転する装置そのものではありません。多くのEVでは、インバーターが電気の流し方を調整してモーターを制御します。役割を分けると、二台の違いが整理できます。
仕組み|回転の先には共通の仕事がある
回転を車輪へ渡すのは、歯車や軸からなる伝達系です。エンジン車では通常、変速比を変えて発進から高速走行まで対応します。EVの多くは、一段の減速機と、広い回転範囲で働くモーターを組み合わせます。EVにも歯車や軸はあり、「モーターだから伝える装置が不要」という意味ではありません。最後はどちらもタイヤと地面の間で力をやりとりします。
一般に、電動の駆動系は車上で電気を車輪の仕事へ変える効率が高く、減速時には回生でエネルギーの一部を電池へ戻せます。ただし、電池が満ちているときや低温時などは回生が制限されます。エンジン車もEVも、空気抵抗やタイヤの変形でエネルギーを失い、冷暖房にもエネルギーを使います。
進化|暮らし方と組み合わせて考える
家で充電でき、日々の移動が決まっている人と、補給設備の少ない場所を長距離移動する人では、便利さの感じ方が違います。エンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドにも、複数の構成があります。技術の優劣を一言で決めるより、使う場所、エネルギーの供給、車をつくる負担まで問いを広げましょう。次の記事では、暮らしに直結する補給の違いを考えます。
この図鑑は理解のために機能を足す順番で構成しています。歴史上の発明順序や、実車の製作手順を示すものではありません。