第8章 一台の車と社会 / 44
燃料補給と充電はどう違うか
「満タンまで待つ」だけが補給でしょうか。エネルギーの量と、受け取る速さを分けると、時間の使い方が見えてきます。
疑問|同じ距離を走る準備なのに、なぜ違う?
燃料はタンクへ液体として移し、充電では電気を通して電池の内部の状態を変えます。どちらも走るためのエネルギーを補いますが、流れるものと受け取る仕組みが違います。液体を入れる速さと、電池が安全に受け入れられる電力を、そのまま同じものさしでは比べられません。
問題|大きな数字なら、いつも速い?
充電器に大きな出力が表示されていても、車がその出力を受け取れるとは限りません。車側の対応能力、電池の温度や残量、設備の電力配分などが関係します。満充電に近づくと出力を下げる制御も行われます。最大出力だけから「何分で終わる」と計算すると、実際の待ち時間から離れてしまいます。
発明|量と速さを別の単位で表す
電力量の単位kWh(キロワット時)は受け渡したエネルギーの量、電力の単位kW(キロワット)はその時点の受け渡しの速さです。水でたとえるなら、ためた水の量と蛇口の流れの速さの違いです。平均して電池へ5 kWで入り続けるなら、20 kWhを入れる時間は20÷5で4時間。これは計算の練習用の条件で、実車の充電時間の約束ではありません。
仕組み|入口から電池までに変換がある
交流の普通充電では、通常は車載の充電装置が交流を直流へ変えて電池へ送ります。直流の急速充電では、設備側で変換した直流を車へ供給します。どちらも車と設備が状態を確かめながら電流などを制御します。電気を通す途中には損失があり、温度調整にもエネルギーを使うため、設備から受け取った量のすべてが電池の蓄えになるわけではありません。
燃料のリットルは体積の単位で、kWhとはそのまま大小を比べられません。さらに、蓄えたエネルギーから車輪の仕事へ変える効率も違います。移動の計画には、同じ条件での走行距離あたりの燃料・電力消費を使い、寒さや渋滞などに備える余裕も考えます。
進化|止まっている時間を補給に使う
充電は移動途中の休憩だけでなく、家や目的地に駐車している間に行う考え方もあります。速さだけでなく、利用できる場所、接続口の対応、設備が使える時間や待ち列が便利さを決めます。大きな出力を一斉に使えば地域の電力設備にも負担がかかります。充電する時刻を調整する仕組みは、車と電力供給の両方を支える工夫です。
この図鑑は理解のために機能を足す順番で構成しています。歴史上の発明順序や、実車の製作手順を示すものではありません。