第8章 一台の車と社会 / 45
車の一生で使う資源とエネルギー
車が走っていない工場や、役目を終えたあとの場所にも、車の物語は続いています。
疑問|走るときだけ数えればよい?
車はできあがった瞬間に現れるわけではありません。鉄やアルミニウムの材料、樹脂、ガラス、電池の材料を集め、加工し、運んで組み立てます。使っている間には燃料や電力が必要です。最後には部品や材料を回収し、使えないものを処理します。この一生の流れをライフサイクルと呼びます。
問題|見えている場所だけでは結果が変わる
排気管だけを見れば見落とすものがあり、工場だけを見ても走行中の違いを見落とします。さらに、年間の走行距離や使う年数が違えば、製造時の負担を何キロの移動で分け合うかも変わります。小型車と大型車、少人数と満員を混ぜた比較では、動力源の影響と使い方の影響が重なってしまいます。
発明|数える範囲を先に線で囲む
ライフサイクル評価は、材料を得る段階から製造、使用、回収までの出入りを調べ、環境への影響を考える方法です。まず「同じ人数と荷物を同じ距離運ぶ」など、果たす仕事をそろえます。次に、どの工程まで数えるかという境界を決めます。電力なら発電と送電、燃料なら採取や精製、輸送をどこまで含めるかも明らかにします。
仕組み|合計と内訳を一緒に見る
考え方は、製造の負担に、走行距離に応じた使用中の負担と、整備や最後の処理の負担を足すことです。ただし、途中で部品交換があれば、その製造分も加わります。EVの使用段階の排出は、充電する電力がどうつくられるかで変わります。エンジン車では燃料を燃やす分に加え、燃料が届くまでの過程も関わります。
二酸化炭素などによる気候への影響と、水の使用、資源の採掘、生き物の環境への影響は、同じ数字ではありません。合計を一つ出して終わりにせず、何の影響を表す指標なのかを読みます。再生材料を使っても回収・選別・加工にはエネルギーが必要で、全量を元と同じ品質に戻せるとは限りません。
進化|長く使い、戻しやすくつくる
軽量化は走行中の消費を減らす助けになりますが、材料の製造や修理のしやすさも考える必要があります。部品を交換して長く使うこと、解体しやすくすること、材料の種類を見分けやすくすることも設計の仕事です。長く使えば必ず最善という単純な結論ではなく、使用中の効率、安全性、修理に必要な資源まで含めて考えます。車の進化は、速く走る能力だけにはありません。
この図鑑は理解のために機能を足す順番で構成しています。歴史上の発明順序や、実車の製作手順を示すものではありません。