第2章 力をつくる / 08
エンジンは燃焼をどう回転に変えるか
燃料を燃やすと熱くなります。でも、熱いだけでは車輪は回りません。熱と回転の間には、気体を閉じ込め、押す力を受け取る仕掛けがあります。

疑問|炎が軸を回している?
たき火のそばに軸を置いても、車を動かす回転は得られません。自動車で広く使われるピストン式エンジンでは、燃焼した気体の圧力をピストンで受け、往復運動を回転へ変えます。燃料の化学エネルギーから、気体を経て軸の仕事へ。間にある段階が、この疑問の答えです。
問題|開いた場所では、押す力を受け止めにくい
燃えた気体が自由に広がれば、車を動かすための仕事として取り出しにくくなります。そこでシリンダーという筒と、その中を動くピストンを使います。ピストンと筒の上部に囲まれた空間が燃焼室です。燃焼する時期には弁を閉じ、気体の膨張がピストンを押せるようにします。
発明|往復する棒を、偏った位置で軸につなぐ
ピストンには、コンロッドという連結棒がつながっています。その先はクランク軸の中心からずれた位置に取り付けられています。気体に押されてピストンが下がると、棒を介してクランク軸を回す作用が生まれます。逆に、回るクランク軸がピストンを押し戻す場面もあります。
仕組み|圧力の差が力になり、位置関係がトルクを決める
ピストンの上と下の圧力差が、ピストン面の広さに応じた力を生みます。その力がコンロッドに伝わり、クランクを回します。ただし同じ押す力でも、クランクの角度によって回す作用は変わります。ピストンが最も上や下に来る位置では、棒の力の向きが軸中心を通るため、その瞬間の力だけでは回しにくくなります。回転部分の慣性や、ほかの気筒の働きが回転をつなぎます。
燃焼で上がった温度と圧力は、ピストンが下がり空間が広がるにつれて変化します。高い圧力が膨張中に仕事をすることが大切で、最大圧力だけで性能は決まりません。また、燃焼室から壁へ伝わる熱や排気とともに出るエネルギーがあり、燃料のエネルギー全部を軸へ渡すことはできません。
進化|燃やす時期と熱の行き先を管理する
現代のエンジンは、燃料を噴く量や時期、点火時期などを運転状態に合わせて制御します。冷却は部品の温度を適切に保ち、潤滑はこすれ合う部分の摩擦や摩耗を抑えます。排気を浄化する装置も必要です。これらは燃焼を回転へ変える基本を支える仕組みであり、熱をすべてなくす装置ではありません。
この図鑑は理解のために機能を加える順で構成しています。歴史上の発明順序を示していません。図は原理の説明で、実車の整備・製作手順ではありません。