第2章 力をつくる / 09
四つの行程で何が起きるか
ピストンを一度押すだけなら、回転は長続きしません。新しい空気を入れ、燃やし、使い終えた気体を出す。その繰り返しを四つの行程で追います。

疑問|次の一押しをどう準備する?
燃焼した気体がシリンダーに残ったままでは、次に燃やすための新しい空気を十分に入れられません。燃焼前には圧縮も必要です。ピストンの往復を「吸気・圧縮・膨張・排気」という役割に分けると、押す場面以外の動きにも意味があることが見えてきます。
問題|入口と出口を、開けっ放しにはできない
吸気弁は新しい空気などの入口、排気弁は燃焼後の気体の出口です。気体を閉じ込めて圧縮したり、燃焼の圧力を受けたりするには、弁を適切な時期に閉じる必要があります。一方、交換するときは開ける必要があります。弁の開閉とピストンの位置を合わせる仕組みが欠かせません。
発明|軸が二回転する間に、一組の仕事をする
ここでは代表例として、火花で点火する四行程ガソリンエンジンを考えます。一行程はピストンが上端から下端、または下端から上端へ動く一回分です。四行程ではピストンが二往復し、クランク軸が二回転して一周期になります。一つの気筒で主に軸へ仕事を渡す膨張行程は、その中の一行程です。
仕組み|吸う・縮める・膨らむ・出す
吸気では、ピストンが下がり、開いた吸気弁から空気または空気と燃料の混合気を取り入れます。圧縮では、弁を閉じたままピストンが上がり、気体を圧縮します。圧縮の終わり付近で点火し、燃焼で高まった圧力が、次の膨張行程で下がるピストンに仕事をします。排気では、排気弁を開き、上がるピストンによって燃焼後の気体を押し出します。
圧縮や吸排気にも仕事が必要です。膨張で得る仕事の一部がそれらをまかない、摩擦なども差し引いた残りが外へ取り出せる仕事になります。実際には点火が圧縮上死点より前に始まる場合があり、弁も行程の境目ぴったりには開閉しません。図の切り替えは役割を理解するための簡略化です。
進化|同じ四行程でも、燃料の使い方は違う
ガソリン直噴では燃料をシリンダー内へ直接噴射し、吸気管で燃料を混ぜる方式とは供給の場所が違います。四行程ディーゼルエンジンも吸気・圧縮・膨張・排気を繰り返しますが、基本的には空気を圧縮して温度を高め、噴射した燃料を自己着火させます。通常の燃焼を始めるための点火プラグは使いません。方式の違いと、四行程という周期の違いを分けましょう。
この図鑑は理解のために機能を加える順で構成しています。歴史上の発明順序を示していません。図は原理の説明で、実車の整備・製作手順ではありません。