第2章 力をつくる / 11
電池はエネルギーをどう蓄えるか
充電ケーブルを抜いても車が走れるのは、電池の中に変化が残るからです。その変化は、空洞に電気を詰めるようなものではありません。

疑問|充電した電気は、どこに入る?
EVに使われる充電式電池は、化学的な状態を変えてエネルギーを蓄えます。ここでは代表的なリチウムイオン電池を取り上げます。充電で電極の材料に生じた状態の違いを利用し、放電時に外部回路へ電流を流せるようにしています。
問題|電子の通り道と、内部の通り道が要る
電池の基本単位をセルと呼びます。セルには二つの電極、イオンが移動する電解質、電極どうしの直接接触を防ぐセパレーターがあります。イオンとは電荷を持つ粒子のことです。外部回路を流れる電子と、内部を移動するイオンが、それぞれの経路を通って反応を続けます。
発明|内と外に別の経路を用意する
代表的なリチウムイオン電池の放電では、リチウムイオンが負極側から正極側へ電解質を通って移ります。電子はセパレーターを突き抜けず、負極から外部回路を経て正極へ移り、途中でモーターなどへエネルギーを渡します。電子の移動方向と、慣用的な電流の向きは逆です。
仕組み|充電では、外からエネルギーを与えて戻す
充電器が電池の状態に合わせた電圧と電流を与えると、放電とは逆向きの変化が進みます。リチウムイオンは正極側から負極側へ戻り、再び放電できる状態になります。典型的なセルでは、リチウムがイオンとして電極材料に出入りする仕組みを使います。充放電のたびに燃料を燃やしているわけではありません。
容量の表示にも区別が必要です。アンペア時(Ah)は取り出せる電荷の量を表し、キロワット時(kWh)はエネルギーの量を表します。電圧も関係するので、Ahの数字だけで蓄えるエネルギーは比べられません。kWは取り出す速さに当たる動力で、kWhとは別の量です。大きな蓄えがあることと、一度に大きな動力を出せることは同じではありません。
進化|多くのセルを、一つの電池として管理する
車ではセルを組み合わせ、必要な電圧とエネルギー量を得ます。電池管理システムは各部の電圧や温度などを監視し、充放電を制限します。低温では反応や内部の移動が進みにくく、高温や過度な充放電は劣化につながります。冷却や加温も、使える性能と寿命を支えます。充電率が同じでも、温度や劣化状態によって出せる動力は変わります。
この図鑑は理解のために機能を加える順で構成しています。歴史上の発明順序を示していません。図は原理の説明で、実車の整備・製作手順ではありません。