MOTORCAR — KNOWLEDGE & TOOLS

第3章 力を伝える / 13

回る力と回転の速さはどう違うか

ゆっくりでも力強い回転と、勢いよく回る回転。その違いを、二つのものさしで見てみよう。

動力装置、減速機、車輪を接続した駆動ユニットの挿絵

疑問|速く回れば、重い車も動く?

軽い風車は勢いよく回ります。でも、その軸につないだだけで重い荷車を動かせるでしょうか。回転の速さを見ただけでは、何をどれだけ動かせるかは分かりません。回転には「どのくらい速いか」と「どのくらい強く回そうとするか」という別の性質があります。

問題|力だけでは回しやすさを表せない

ドアを押す場面を思い浮かべましょう。ちょうつがいの近くより、取っ手の位置を押すほうが楽です。同じ力でも、回転の中心から遠いところに働くと、回す作用が大きくなります。この回す作用をトルクと呼びます。単なる押す力とは区別し、単位にはニュートンメートル(N·m)を使います。

発明|回す作用と回る速さを分けて測る

力を腕に直角に加える場合、トルクは「力×中心からの距離」です。10 Nの力を中心から0.2 mの位置に加えると2 N·m、0.4 mなら4 N·mになります。斜めに押す場合は、回転に役立つ向きの成分だけを数えます。一方、回転速度は1分間の回転数などで表し、その単位がrpmです。

同じ10ニュートンの直角な力でも、腕が0.2メートルなら2ニュートンメートル、0.4メートルなら4ニュートンメートル。
軸を上から見た概念図。力は腕に直角とし、変形と摩擦を省略しています。矢印は力の向きで、回転速度ではありません。

仕組み|トルクがあっても、止まっていることがある

動かないドアを押しても、トルクは加わっています。けれどドアが回らなければ、そのドアに回転による仕事はしていません。「1秒間にどれだけ仕事をするか」を仕事率(出力)といい、ワット(W)で表します。回転では、仕事率はトルクと角速度を掛けたものです。角速度とは、1秒間にどれだけの角度を回るかです。

例えば、同じ10 N·mでも毎分600回転なら約628 W、毎分1200回転なら約1257 Wです。トルクが同じなら速く回るほうが、単位時間に多くの仕事を渡せます。ただし、回転速度を上げたとき同じトルクを出せるかは、動力源の能力次第です。

車輪に届いたトルクは、タイヤと地面の間の力につながります。損失や車輪自体の加速を無視すれば、地面に伝える力の目安は「車輪のトルク÷タイヤの半径」です。同じトルクでも大きな車輪では力が小さくなる一方、一回転で進む距離は長くなります。タイヤが滑れば、この単純な関係だけでは前進を説明できません。

進化|数字は、どこの軸かまで読む

エンジンやモーターのトルクと、車輪のトルクは同じとは限りません。途中の歯車が回転速度とトルクの組み合わせを変えるからです。また、動力源が出せるトルクは回転速度によって変わり、温度や制御による制限も受けます。「最大トルクが大きい」という一つの数字だけで、発進から高速走行まですべての性能は決まりません。

必要なのは、そのときの速さで、必要な力を車輪へ渡すこと。次は歯車を使って、この二つのものさしの組み合わせを変えてみましょう。

この章の順番は理解のための構成であり、歴史上の発明順序ではありません。

第3章・13 / 48