MOTORCAR — KNOWLEDGE & TOOLS

第3章 力を伝える / 17

曲がるとき左右の車輪は同じ速さか

輪になって歩くと、外側の人ほど大股になる。車輪にも、その違いを許す仕組みがいる。

入力ピニオンとリングギア、差動歯車を備えたデファレンシャルの挿絵

疑問|横に並んだ車輪は一緒に回ればよい?

まっすぐ走るなら、同じ大きさの左右のタイヤはほぼ同じ回転数で進みます。では曲がるときはどうでしょう。内側の車輪は小さな円、外側の車輪は大きな円を描きます。同じ時間で曲がり終えるには、外側が長い道のりを進まなければなりません。

問題|一本の棒で固定すると、どちらかが無理をする

左右輪を一本の軸に固定すると、二つは同じ回転数になります。曲がるときに必要な道のりが違うため、タイヤが地面に対してずれたり、タイヤや軸が変形したりして差を吸収します。これは抵抗や摩耗、曲がりにくさにつながります。自由に回るだけの車輪なら別々に取り付ければよいのですが、駆動輪には両方へトルクを送りながら速さの差を許す仕組みが必要です。

発明|回転を左右へ分けながら、差を許す

差動装置(ディファレンシャル)は、左右の駆動輪へ動力を渡しつつ、異なる回転速度で回れるようにする装置です。代表的な構造では、入力で回るケースの中に小さな歯車があり、左右の軸につながる歯車とかみ合います。ケースが全体を運ぶ動きに、小さな歯車の自転が加わることで、左右の速さを変えられます。

旋回では外輪の道のりが長い。対称な差動装置の例として左右80rpmと120rpmの平均はケースの100rpmになる。
上から見た定常旋回の概念図。タイヤは同径で滑らないとし、操舵角と内部の歯車形状を省略。回転速度の数値は、対称な差動装置の関係を示す例です。

仕組み|片方が速くなった分、もう片方は遅くなる

左右対称な一般的な差動装置では、左右の回転速度の平均がケースの回転速度になります。ケースが100 rpmなら、左右がともに100 rpmでも、80 rpmと120 rpmでも、この関係を満たします。装置が曲がり角を見て命令するのではありません。路面と車輪が決める動きに合わせて、内部の歯車が回るのです。

ここで、速さとトルクを分けて考えましょう。基本的なオープンデフでは、内部摩擦などを無視すると左右へほぼ等しいトルクを渡します。左右の回転速度が違っても、トルクまで同じ割合で変わるわけではありません。速い側は同じトルクで多く回るので、受け取る仕事率は大きくなります。

片輪が滑りやすい場所に乗ると、その輪が支えられるトルクは小さくなります。オープンデフでは反対側へ渡せるトルクもその小さい値に制限され、十分な駆動力を得られない場合があります。「力が全部、滑る輪へ逃げる」という表現だけでは、左右のトルクの関係を取り違えてしまいます。

進化|差を許しつつ、空転を抑える

LSD(差動制限装置)は、左右の回転差などに応じて差動を制限し、トルクの配分に偏りをつけられる装置です。摩擦板を使うものや歯車の働きを使うものなどがあり、片輪がほぼ浮いた場合の働き方も方式で異なります。左右を強く結ぶデフロックは悪路で役立つ場面がありますが、滑りにくい路面の旋回では回転差を妨げる問題があります。

空転した輪にブレーキをかけ、反対側で使えるトルクを増やす制御もあります。左右に別々のモーターを置く構成なら、それぞれの駆動トルクを電気的に調整する方法も選べます。どの方式も、タイヤと路面がやりとりできる力の限界を超えられるわけではありません。

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