第3章 力を伝える / 18
前輪駆動・後輪駆動・四輪駆動
回転をどの車輪へ届けるか。その選択は、車内の広さから曲がり方までつながっている。

疑問|車を前へ進めるのは前輪? 後輪?
四つの車輪が回っていても、すべてが動力源につながっているとは限りません。動力を受け取らない車輪も、車が進めば路面との接触によって回ります。動力を渡す車輪を駆動輪といい、前輪を使う前輪駆動、後輪を使う後輪駆動、前後を使う四輪駆動という選び方があります。
問題|タイヤには仕事の限界がある
タイヤは車を前へ進める力だけでなく、曲がるための横向きの力も受け持ちます。路面との間で使える力には限界があり、駆動に大きく使うと横向きに使える余裕が減ります。その限界は、タイヤ、路面、各輪を地面へ押す荷重などで変わります。どの車輪を駆動するかは、力の分担をどうするかという問題でもあります。
さらに、人や荷物の場所、動力源の置き場所、軸を通す空間も必要です。走りやすさだけでなく、車全体を一つの箱に収める工夫が求められます。
発明|車の使い道に合わせて配置を選ぶ
前輪駆動では、前輪が操舵と駆動の両方を担います。エンジンなどを前にまとめる構成では、長い駆動軸を後方へ通さずに済み、室内空間を確保しやすくなります。ただし、前輪は向きを変えながら動力も受けるため、角度が変わっても回転を伝える継手が必要です。
後輪駆動では、主に前輪が操舵、後輪が駆動を担当します。前にあるエンジンから後輪を回す構成では、車体の前後を結ぶプロペラシャフトなどが必要です。後ろにモーターを置いて後輪を回すEVなら、同じ長い軸が必須とは限りません。「どの輪を回すか」と「動力源をどこへ置くか」は別々に考えます。
仕組み|荷重の移動と、前後の回転差
平らな道で加速すると、一般に前輪の荷重が減り、後輪の荷重が増えます。その変化は重心の高さや前後輪間の距離、加速度に関係します。後輪駆動では増えた後輪荷重を駆動に使いやすく、前輪駆動では前輪荷重が減ることが制約になります。ただし、もとの重量配分やタイヤも影響するので、配置の名前だけで加速性能は決められません。
四輪駆動は、前後のタイヤを駆動に使い、二輪だけでは使い切れない路面の力を利用できる場合があります。一つの動力源から前後へ伝える方式では、軸や歯車、クラッチなどで動力を分けます。前後に別のモーターを置く方式なら、機械的に前後を結ぶ長い軸なしで、それぞれを駆動できます。
曲がるときは左右だけでなく、前輪と後輪の通る道のりも違います。前後を機械的に結ぶ四輪駆動では、センターデフや制御クラッチなどで差を許す構成があります。前後を固定的に結ぶ方式もありますが、滑りにくい路面では差を逃がせず、伝達系に無理が生じる場合があります。四輪駆動という同じ名前でも、内部の構成と適する条件は違うのです。
進化|必要な場所へ、必要な分を渡す
車輪の回転や車の動きを測り、前後のトルク配分を調整する仕組みが使われています。複数のモーターを使えば配分を細かく変えられますが、モーター、電池、冷却の能力にも制限があります。使わない駆動経路を切り離して、損失を抑える構成もあります。
四輪駆動でも、止まる距離が自動的に短くなるわけではありません。一般の車は駆動方式にかかわらず四輪のブレーキを使い、制動は路面とタイヤなどに制約されます。よく発進できることと、よく止まれることを分けて考えましょう。