第4章 道路とつながる / 22 / 減衰
ばねだけではなぜ揺れ続けるか
段差の一撃を柔らかく受けても、その後ずっと船のように揺れたら困ります。受け止める仕組みには、揺れを終わらせる相棒が必要です。

疑問|一つの段差で、何度も上下するのはなぜ?
車輪と車体の間にばねを入れると、車輪だけが先に段差を上がれます。車体が路面とまったく同じ速さで持ち上げられるのを避けられるわけです。ところが、ばねは縮んだまま止まる装置ではありません。押されたら、元に戻ろうとします。
戻った瞬間に車体の動きまでぴたりと止められればよいのですが、動いている物体には動き続ける性質があります。車体はつり合いの位置を通り過ぎ、今度はばねを反対向きに変形させます。
問題|ばねはエネルギーを返してしまう
ばねを縮めると、弾性エネルギーという、形の変化によるエネルギーが蓄えられます。伸び戻ると、それが車体などの運動エネルギーになります。次にばねが変形すると、運動エネルギーが再び弾性エネルギーへ戻ります。
摩擦などをまったく考えない理想的なばねと重りなら、この受け渡しは続きます。実物では摩擦や材料の損失で少しずつ弱まりますが、それだけに任せると、乗り心地やタイヤの接地を十分に整えられるとは限りません。
発明|動きに抵抗して、エネルギーを熱へ渡す
ばねと組み合わせるのがダンパーです。揺れを小さくしていく働きを減衰と呼びます。一般的な油圧式ダンパーでは、内部のピストンが動くと油が狭い通路や弁を通ります。その流れへの抵抗が、伸び縮みの動きを妨げます。
この抵抗がする仕事によって、揺れのエネルギーは主に熱へ変わります。ばねが「預かって返す」役なら、ダンパーは「熱に変えて揺れから取り除く」役です。ショックアブソーバーとも呼ばれますが、通常は車重を主に支えるばねとは分けて考えます。
仕組み|硬く止めればよい、とは限らない
ダンパーの力は、主に両端が相対的にどれだけ速く動くかに応じて変わります。ここでいう速さは、車が道路を進む速度ではなく、ダンパー自身の伸び縮みの速度です。簡単な模型では力をその速度に比例させますが、実際の弁の働きはもっと複雑です。
抵抗が小さすぎると揺れが残り、大きすぎると車輪が凹凸に合わせて動きにくくなり、車体へ強い力を伝える場合があります。ばねの硬さ、車体や車輪の質量、使う路面に合わせた釣り合いが必要です。縮むときと伸びるときで、抵抗を変える設計もあります。
タイヤもばねのように変形するため、実車には車体のゆっくりした揺れと、車輪側の速い揺れが関わります。ダンパーは乗っている人の快適さだけでなく、タイヤが路面を追いかける動きにも影響します。
進化|場面に応じて抵抗を変える
電子制御で弁などを動かし、減衰力を変えるダンパーもあります。車体の動きや路面からの入力を調べ、ゆったりした動きと鋭い段差で働き方を調整します。
抵抗を変える方式と、外部のエネルギーを使って積極的に車体を動かす方式は、同じものではありません。装置が何を変えているのかを見ると、「電子制御サスペンション」という名前の中にも異なる仕組みがあるとわかります。