第4章 道路とつながる / 23 / リンク
車輪の向きをどう保つか
上下には動いてほしい。でも、勝手に前後へずれたり、曲がったりしては困る。車輪に許す動きを決めるのが、足まわりの腕です。

疑問|ばねでつなぐだけでは、車輪は迷子になる?
車輪と車体をばねだけでつないだ場面を想像しましょう。段差では縮めそうですが、ブレーキをかけると車輪は前後にずれようとします。曲がるときには横向きの力も加わります。ばねだけでは、必要な向きに車輪を案内できません。
車輪は回転しながら上下し、前輪ならハンドルの操作に合わせて向きも変えます。この複数の動きを、互いに邪魔しないよう整理する必要があります。
問題|動けることと、ぐらつかないことを両立する
車輪を車体へ完全に固定すれば向きは保ちやすくなりますが、路面を追いかけて上下できません。反対に自由にしすぎると、タイヤの接地状態や進む向きが安定しません。
しかも車体は、曲がったりブレーキをかけたりすると傾きます。平らな場所で静止しているときだけ向きが合っていても十分ではありません。動いた先でどんな姿勢になるかまで決めることが、設計の課題です。
発明|支点を持つ腕で、動ける道を決める
アームやリンクは、車体と車輪側の部品をつなぐ腕や棒です。車輪を支える部品をナックルなどと呼び、そこへ複数の腕をつなぎます。腕の端の継ぎ目が回転することで、位置を保ちつつ必要な動きを許します。
腕は伸び縮みするばねと違い、基本的には長さを保って動きを案内します。支点の位置と腕の長さを選べば、車輪が上下するときの通り道や傾き方を作り分けられます。形を決める幾何学が、乗り味に関わるのです。
仕組み|「向き」にはいくつもの種類がある
正面から見た車輪の傾きをキャンバーと呼びます。上から見て左右の車輪の先端が内側や外側へ向く角度はトーです。どちらもタイヤが道路へ力を伝える様子に影響します。いつでも垂直、いつでも平行ならよいとは限らず、車体が動いたときの変化まで含めて設計します。
操舵輪では、ハンドルからの動きをタイロッドという棒で車輪側へ伝えます。この棒とサスペンションの腕の動く道筋が適切に組み合わされていないと、上下しただけで車輪の向きが大きく変わってしまいます。路面の段差と操舵の関係も、リンク配置の問題なのです。
継ぎ目にはゴムなどを使ったブッシュもあります。小さくたわんで振動や音を和らげますが、大きな力がかかるとそのたわみも車輪の向きに影響します。図面上の幾何学に加え、材料のしなやかさも考えなければなりません。
進化|腕の本数だけでは、優劣は決まらない
伸び縮みする支柱も車輪の案内に使うストラット式、上下の腕を使うダブルウィッシュボーン式、複数のリンクで役割を分けるマルチリンク式などがあります。構造によって必要な空間、重さ、調整の自由度、部品の数が違います。
左右の車輪をどうつなぐかも設計の一部です。独立して動く方式でも、車体やスタビライザーを通じた影響はあります。「独立」という名前だけで、一方の動きが他方へまったく伝わらないと考えないことが大切です。