第4章 道路とつながる / 24 / ロール
曲がると車体が傾くのはなぜか
タイヤはカーブの内側へ車を導きます。それなのに車体は外側へ傾く。この二つは、同じ力の働きから生まれます。

疑問|左へ曲がるのに、体は右へ寄る?
車が左へ曲がると、座っている人は右へ寄せられるように感じます。道路の側から見ると、人の体はそれまでの向きへ進み続けようとし、座席などから左向きの力を受けて進路を変えています。
車体も同じように、進む向きを変えるための力が必要です。その力は主に道路とタイヤの接地面で生まれます。しかし重さの中心は、接地面より高いところにあります。この高さが、傾きの謎を解く手がかりです。
問題|低い場所で受ける横向きの力が、車を傾ける
物体の質量の分布を一つの点で代表したものを重心といいます。車の重心より低い接地面で横向きの力を受けると、車を横倒しに回そうとする作用が生まれます。車体が前後方向の軸のまわりに傾く動きを、ロールと呼びます。
車と一緒に曲がる立場では、重心に外向きの慣性力を置いて考えることもできます。これは同じ現象を別の立場から説明する方法です。道路から見た説明へ、その外向きの力を別の実在する力として足すと二重に数えてしまいます。
発明|ばねと左右を結ぶ棒で、傾きに抵抗する
一般的な受動式サスペンションでは、旋回で外側のばねがより縮み、内側は伸びる方向に動きます。左右のばねの力の差が、車体の傾きに抵抗します。実際の量はリンクの配置などによっても変わります。
左右のサスペンションをつなぐスタビライザーは、棒のねじれを利用して左右の動きの差に抵抗する装置です。左右が同じように上下する場合に比べ、片側が縮み反対側が伸びる場合に強く働くよう設計できます。ばねを一律に硬くする以外の方法で、ロールへの抵抗を加えられます。
仕組み|傾きと荷重移動は、同じ量ではない
旋回すると外側のタイヤの荷重は増え、内側は減ります。これを横方向の荷重移動と呼びます。単純な車両モデルでは、内側から外側へ移る荷重は、車の質量、横向きの加速度、重心の高さに比例し、左右の車輪間の幅が広いほど小さくなります。
ここで大切なのは、車体を傾きにくくしても荷重移動そのものはなくならないことです。車体がほぼ水平でも、タイヤの受け持つ重さは左右で変わります。重心の高さや車輪間の幅による基本的な関係と、ばねがどれだけたわむかを区別しましょう。
スタビライザーなどは、前後の車軸が荷重移動をどう分担するかにも関わります。タイヤの力は荷重に単純比例しないため、前輪側と後輪側の分担が変わると、曲がり方の性質も変わります。傾きが小さいことだけを目標に、硬くすればよいわけではありません。
ダンパーは、旋回を始めて車体が傾いていく途中の速さを抑えます。一方、一定のカーブで動きが落ち着いたときの傾きは、主にばね、スタビライザー、リンク配置などで決まります。動きの途中と、落ち着いた後では担当が違うのです。
進化|水平に保つ工夫にも、別の課題がある
外部のエネルギーで左右の力を調節する装置や、スタビライザーの働きを変える装置もあります。乗り心地と車体姿勢を場面ごとに整えられますが、装置の重さ、消費エネルギー、複雑さも考える必要があります。
電池など重い部品の配置によって重心を低くすることも、傾けようとする作用を減らす手段です。ただし重心の高さだけで車の性能は決まりません。タイヤ、ばね、ダンパー、リンクを一緒に考えて、初めて道路とつながる一台の足になります。