第5章 止まる・守る / 25
ディスクブレーキをのぞいてみよう
回る金属の円板を、両側からはさむ。たったそれだけに見える場所で、車の運動エネルギーが熱へ姿を変えています。

疑問|車輪をはさむと、車まで止まる?
車輪のすき間から見える、つるりとした金属の円板。それがディスクブレーキのローターです。ローターは車輪と一緒に回ります。ブレーキを使うと、その両面にパッドという摩擦材を押し当てます。自転車の車輪を手ではさんで止める考え方に似ていますが、実車は大きな力と熱に耐える専用部品を使います。
ここでの問いは「どの部品が止まるか」だけではありません。走っている車が持つエネルギーは、止まったあと、どこへ行くのでしょう。
問題|回転を止めても、地面をつかめなければ止まれない
車輪に回転を遅くする力をかけると、タイヤと路面の間に車を減速させる力が生まれます。ブレーキは車輪に作用し、道路から受ける力が車全体を減速させる。この二段階を分けると、滑りやすい道路での限界も見えてきます。
どれほど強いブレーキでも、タイヤが路面とやりとりできる力を無限には増やせません。また、同じ重さなら速さが2倍になると運動エネルギーは4倍です。速い車ほど、取り去るエネルギーが大きくなります。
解決のアイデア|回る円板を、動かない部品ではさむ
ローターのそばには、パッドを支えるキャリパーという部品があります。キャリパーは車輪と一緒には回らず、足まわりの支持部に取り付けられています。内部のピストンが動くことで、左右のパッドがローターをはさみます。
パッドから受ける摩擦がローターの回転を妨げ、その反作用はキャリパーを通して車体側へ伝わります。動く側と支える側の組み合わせがあって、初めてブレーキとして働くのです。
仕組み|押す力が摩擦を生み、摩擦が熱を生む
パッドがローターを押す力が増えると、同じ状態なら摩擦による回転を妨げる働きも大きくなります。さらに、回転の中心から遠い場所で摩擦を働かせるほど、大きな制動トルク、つまり回転を止める向きの力の働きを得やすくなります。
摩擦の仕事によって、主にローターやパッドが熱くなります。その熱は空気や周囲の部品へ移ります。長い下り坂でブレーキに仕事をさせ続けると、温度が上がり、摩擦材の働きが低下するフェードなどが起こり得ます。熱を受け止め、逃がす能力も性能の一部です。
進化|強くはさむだけでなく、熱を逃がす
内部に空気の通り道を持つベンチレーテッドディスクは、熱を逃がしやすくする工夫です。ただし、穴や溝があれば必ず優秀というわけではありません。重さ、強さ、冷え方、摩耗、音などを合わせて設計します。
車によっては後輪などにドラムブレーキを使います。回生ブレーキを備えた車も、摩擦ブレーキを組み合わせます。「止める装置」を選ぶときには、目立つ大きさだけでなく、繰り返し使う条件とタイヤの力まで考える必要があります。
この図鑑は理解のための順番で構成しています。歴史上の発明順序を示すものではありません。図は整備・製作の手順を示しません。