MOTORCAR — KNOWLEDGE & TOOLS

第5章 止まる・守る / 26

ペダルの力はどう伝わるか

足元と四つの車輪は、遠く離れています。その間をつなぐ液体は、力を増やす代わりに、動く距離を受け持ちます。

ブレーキペダル、油圧配管、キャリパーの構成を示す概念挿絵

疑問|足元の動きが、どうして車輪に届く?

ペダルを踏む場所から前輪までは少し、後輪まではさらに距離があります。一本の棒を伸ばすだけなら、車体の動きや車輪の上下運動に合わせにくそうです。そこで多くの乗用車は、ブレーキ液を満たした配管で力を伝えます。

ただし、液体がペダルから車輪まで一気に流れていくわけではありません。液体の小さな移動と圧力の伝わりによって、離れたピストンを動かします。

問題|四つの車輪へ、曲がった道を通して力を届けたい

配管には曲がりがあり、車輪の近くには動きに対応するホースもあります。それでも踏み加減を伝え、必要な押す力を生まなくてはなりません。ここで区別したいのが、力と圧力です。

圧力は、面積あたりに加わる力です。同じ力でも、小さな面を押すほど圧力は高くなります。逆に、同じ圧力を大きな面で受ければ、取り出せる力は大きくなります。

解決のアイデア|液体を閉じ込めて圧力を伝える

ペダルの動きは、マスターシリンダーという液圧をつくる装置のピストンを押します。閉じた液体に加えた圧力は各方向に伝わります。これが、油圧で力を届ける基本の考え方です。

車輪側のピストンはその圧力を受け、ブレーキパッドなどを押します。静止に近い単純なモデルでは、圧力pは力Fを面積Aで割ったもの、つまりp=F÷Aです。実車の制動力は、ピストンの配置やブレーキの形式にも左右されます。

ペダルの力はどう伝わるかの概念図。入力面積1に対して出力面積4なら力は4倍、移動距離は4分の1。
数値は静止に近い、漏れ・摩擦・液や配管の変形・高さの差を無視した単一回路の例です。実車の回路分割、補助装置、キャリパーの構造は省略しています。

仕組み|大きな力の代金は、動く距離

入口のピストン面積を1平方センチメートル、出口を4平方センチメートルとしましょう。入口を100ニュートンで押せば、理想的には出口で400ニュートンを得られます。ニュートンは力の単位です。液体がエネルギーをつくったのではありません。

入口を4ミリメートル動かしたとき、出口の移動は1ミリメートルになります。押し出す液体の体積が同じだからです。力を4倍にすると距離は4分の1。摩擦や変形を無視すれば、力と距離の積で表す仕事は同じです。

液体は圧縮されにくい一方、空気は圧縮されやすいため、回路に空気が入ると、ピストンを押す前に気体を縮める動きが増えます。高温で液の一部が蒸気になる場合も問題になります。これは構造を理解する説明であり、液交換や空気抜きの手順ではありません。

進化|足の力を助け、圧力を車輪ごとに調整する

多くの車には、足で生む力を助けるブレーキブースターがあります。空気の圧力差を使うものや、電動で補助するものなど方式はさまざまです。ペダルのてこ、補助装置、油圧を合わせて、必要な力と踏み心地をつくります。

一般的な乗用車では液圧回路を複数に分け、一か所の故障ですべての制動を失いにくくする工夫もあります。ABSは弁やポンプで各輪の圧力を調整します。電子制御を使う車でも、圧力をつくる役割と、摩擦で車輪を減速させる役割は分けて考えられます。

この図鑑は理解のための順番で構成しています。歴史上の発明順序を示すものではありません。図は整備・製作の手順を示しません。

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