第5章 止まる・守る / 28
回生ブレーキは何を回収するか
減速するときのエネルギーを、次に走るために少し残せないか。回生ブレーキは、モーターを発電する側へ働かせます。

疑問|止まるたびに、エネルギーを捨てている?
走る車には運動エネルギーがあります。摩擦ブレーキは、その多くを熱に変えて減速します。では、熱に変える前に電気として取り出せば、電池へ戻せるのではないでしょうか。これが回生ブレーキの考え方です。
回収するのは「速さ」という物質でも、使い終えた電気そのものでもありません。車が動いているために持つエネルギーの一部です。下り坂では、高い場所にいることで持つ位置エネルギーも、減速や速度維持の途中で回収のもとになります。
問題|熱になって広がったエネルギーは、戻しにくい
エネルギーは消えてなくなりませんが、熱として広く散らばると、車を走らせる仕事へ戻すのが難しくなります。減速のたびに摩擦熱だけにするのは、使える形のエネルギーを手放すことになります。
とはいえ、走る間には空気抵抗やタイヤの転がり抵抗でもエネルギーが周囲へ移っています。回生は、すでに周囲へ移った分まで拾い集める装置ではありません。
解決のアイデア|車輪からモーターを回して発電する
駆動モーターは電気から回転をつくれますが、外から回されると発電機としても働けます。回生時には、タイヤ、軸や歯車などの伝達系、モーターの順にエネルギーが流れます。発電に伴う回転への抵抗が、駆動輪を減速させます。
取り出した電気は電力変換装置を通り、電池が受け入れられる形へ制御されます。エンジンブレーキは、エンジン内部の抵抗などで車を減速させる働きです。それ自体が電池を充電する回生ブレーキと同じというわけではありません。
仕組み|電池まで届く途中にも、限界と損失がある
車の運動エネルギーは、重さと速さの二乗に比例します。しかし、その全量を電池へ戻すことはできません。歯車、モーター、電力変換装置、電池のそれぞれで、エネルギーの一部が熱などになります。
電池が満充電に近いときや、温度が適した範囲にないときには、受け入れられる電力が制限されます。強い減速で必要な力がモーターの能力を超えたときも、回生だけでは足りません。また、低速では回収できる電力が小さくなり、多くの車は停止付近を摩擦ブレーキで補います。
回生が働くのは基本的にモーターにつながる車輪です。滑りやすい路面では、その車輪が出せる力にも制限があります。電池に空きがあっても、いつでも大きな回生をかけられるわけではないのです。
進化|回生と摩擦を、ひとつの減速につなぐ
回生と摩擦ブレーキを協調させる制御は、必要な減速を保ちながら、回収できる分を回生に受け持たせます。電池の状態で回生が変わっても、ペダルの要求に合う制動をつくることが設計の課題です。アクセルを戻したときの減速の強さも車種や設定で異なります。
回生した電気を使って再び加速するときにも損失があります。同じ道を同じ条件で走れるなら、むだな加速と減速を減らすほうが、何度も回収を繰り返すよりエネルギーを節約できます。回生は「戻せるから使い放題」にする技術ではなく、必要な減速の損失を小さくする技術なのです。
この図鑑は理解のための順番で構成しています。歴史上の発明順序を示すものではありません。図は整備・製作の手順を示しません。