MOTORCAR — KNOWLEDGE & TOOLS

第5章 止まる・守る / 29

シートベルトとエアバッグの役割

車が止まっても、体は前へ動き続けようとします。人を守るには、体にも力を伝え、止まる時間をつくる必要があります。

座席の三点式ベルトと展開したエアバッグの概念挿絵

疑問|車が止まれば、乗っている人も止まる?

走る車の中では、人も車とほぼ同じ速さで動いています。衝突で車が急に減速しても、体はそれまでの運動を続けようとします。これを慣性と呼びます。体にも外から力が働いて、初めて速さが変わります。

「前へ投げ出す力」が突然生まれると考えるより、先に車が減速し、体が取り残されると考えてみましょう。何も受け止めるものがなければ、体はハンドルや内装などにぶつかってから急に止まることになります。

問題|体の一か所を、短い時間で止めると負担が大きい

同じ人を同じ速さから止めるなら、速さを変えるための力を長い時間に分けるほど、平均の力を小さくできます。ただし、その間には体が動く距離も必要です。車内の限られた空間で、硬い部分に当たる前に減速させることが課題になります。

さらに、細い場所だけに力を集中させると負担が増えます。体のどこで力を受けるか、どちらへ動くかも重要です。やわらかい物なら何でも安全なのではなく、受け止める面と動く量を設計する必要があります。

解決のアイデア|体を受け止める場所と時間を用意する

三点式シートベルトは、肩から胸を通る部分と、腰を押さえる部分で体を支えます。骨盤や胸などで力を受け持ち、座席から大きくずれたり、車外へ放り出されたりするのを抑えます。

エアバッグは、衝突時にふくらむ袋で、頭や胸などが硬い部品へ直接ぶつかる負担を減らす補助装置です。ベルトで保った位置を前提に、必要な場所で体を受け止めます。エアバッグがあるからベルトを省ける、とはなりません。

シートベルトとエアバッグの役割の概念図。前へ動こうとする体をベルトで支え、前方のエアバッグが受け止めを補助する。
図は前面衝突を横から見た働きの概念図です。ベルト経路・袋の大きさ・人の移動量は模式的で、装着方法や設置寸法を示す図ではありません。

仕組み|ベルトが位置を保ち、エアバッグが補う

ベルトの巻き取り装置は、通常のゆっくりした動きには追従し、急な引き出しや車の急な動きなどでロックする仕組みを持ちます。衝突時にたるみを素早く引くプリテンショナーや、力が大きくなりすぎないよう一定の範囲でベルトを送り出すロードリミッターを備えるものもあります。

エアバッグは、ふくらませるだけでなく、体を受け止めながらガスを逃がすことで負担を調整します。前面用、側面用、頭部を守るカーテン状のものなどがあり、すべてがすべての衝突で開くわけではありません。センサーと制御装置が、衝突の方向や強さなどに応じて作動を判断します。

ベルトはねじらず、腰側を腹の上ではなく骨盤の低い位置に沿わせ、肩側は首や腕の下を避けて体に合う位置に通します。実際の調整は車の取扱説明書に従います。大きく倒した姿勢や強いたるみは、設計された受け止め方から外れる原因になります。

進化|衝突の前後に合わせて、働き方を変える

乗員の状態や衝突に応じて、エアバッグの展開やベルトの力を調整する技術があります。衝突前にベルトのたるみを減らす仕組みを持つ車もあります。目標は強く縛ることではなく、使える空間の中で、体への負担を抑えて止めることです。

子どもは大人と体の大きさや骨格が違い、大人用ベルトが適切な位置に合わないことがあります。体格に合うチャイルドシートなどを、その製品と車の説明書に従って使う必要があります。車体、座席、ベルト、エアバッグが組み合わさって初めて、守る仕組みになります。

この図鑑は理解のための順番で構成しています。歴史上の発明順序を示すものではありません。図は整備・製作の手順を示しません。

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