MOTORCAR — KNOWLEDGE & TOOLS

第6章 車体をつくる / 32

軽さと強さをどう両立するか

重い材料を薄くすればよい? 車体の軽さは、材料と形とつなぎ方の相談で決まります。

車の軽量化に用いる補強部材やパネルの挿絵

疑問|軽い車体は弱いの?

空の紙箱でも、角をそろえて立てると物を支えられます。同じ紙を平らに広げたものとは、曲がりにくさが違います。車体でも、重さだけから丈夫さは決まりません。材料をどこへ、どんな形で使うかが大切です。軽量化は、単に材料を減らす作業ではないのです。

問題|薄くすると別の弱点が現れる

車を軽くすると、加速で増やす運動エネルギーを小さくでき、タイヤなどが受ける負担にも影響します。しかし板を薄くするだけでは、たわみやすくなったり、押されたときに急に折れ曲がる座屈が起きやすくなったりします。必要なのは引っ張りへの強さだけではありません。へこみにくさ、疲労への耐久性、腐食への備えも考えます。

解決|材料の性格に合う役割を渡す

高張力鋼は、引っ張る力に高い強さをもたせた鋼材です。同じ役割をより薄い板で担える場合があります。ただし、強度を上げても、鋼材の弾性的なたわみにくさを決める性質が同じ割合で増すわけではありません。アルミニウム合金は鋼より密度が小さい一方、同じ形と厚さでは弾性的にたわみやすいため、厚みや断面の工夫と組み合わせます。

板の形と曲げにくさ。梁を横から見た支え方と、端から見た断面の模式図。小さな弾性変形を考える例です。断面形状の考え方のみを示し、同質量・同寸法の性能比較ではありません。座屈、接合部、数値寸法は省略しています。
梁を横から見た支え方と、端から見た断面の模式図。小さな弾性変形を考える例です。断面形状の考え方のみを示し、同質量・同寸法の性能比較ではありません。座屈、接合部、数値寸法は省略しています。

仕組み|断面を深くして曲げに対抗する

板に折り目や溝をつけると、材料を曲げの中心から離して配置できます。これが、材料をむやみに増やさず曲げにくくする考え方です。箱形の断面や板の凹凸は飾りとは限りません。ただし、どの向きの力に効くかは形によって変わります。図のように支える間隔が同じでも、断面の向きが変われば結果は変わります。

複数の材料を使えば、接合も課題になります。溶接、接着、機械的に締結する方法などを、材料や場所に応じて選びます。異なる金属が水分を介して接すると腐食が進みやすい組み合わせもあり、絶縁や防水が必要です。材料単体の性能がよくても、接合後の車体として使えることを確かめなければなりません。

進化|一台全体で軽さを評価する

繊維強化樹脂は、樹脂と強い繊維を組み合わせた材料です。繊維の方向で性質が変わるため、力の向きに合わせた設計が欠かせません。材料選びには製造のしやすさ、修理、費用、回収後の扱いも関わります。軽い材料を使うだけで環境への負担が必ず小さくなるとは限らず、製造から使用、再資源化まで見渡して判断します。

この図鑑は理解のための順番で構成しています。「解決」は設計の考え方であり、歴史上の発明順序や特定の発明者を示しません。実車の整備・製作手順は扱いません。

第6章・32 / 48