第6章 車体をつくる / 31
骨組みは何を支えているか
車体は、人を入れる箱であると同時に、道路から届く力を受け渡す道でもあります。

疑問|屋根を支えるだけの骨なの?
車を横から見ると、屋根を柱が支えているように見えます。けれども、車体の仕事は屋根を落とさないことだけではありません。座席に座る人、荷物、動力装置などを支え、タイヤからサスペンションを通って届く力を受け止めます。ブレーキをかけたときには、座席やベルトの取り付け部にも力がかかります。
問題|四つの車輪は同じ高さを走らない
片方の車輪だけが段差に乗ると、車体は雑巾を絞るようにねじられます。前後に離れた車輪の間では、重さによって曲げられもします。ここで車体が大きく変形すると、サスペンションの取り付け位置が動き、狙った車輪の向きを保ちにくくなります。ドアの開口部のような大きな穴も、力の通り道を途切れさせやすい場所です。
解決|力を一本に集めず、輪につなぐ
床、左右の下側の骨、屋根、柱をつなぎ、力をいくつもの経路へ分けます。ドアの下の太い部分はサイドシル、屋根を支える柱はピラーと呼びます。これらを輪のようにつなぐと、大きな開口部の周りでも力を受け渡せます。閉じた断面をもつ部材を使うことも、ねじれに抵抗する助けになります。
仕組み|面もつなぎ目も働いている
多くの乗用車で使われるモノコック系の車体は、骨に見える部材だけでなく、床などの板も構造の一部として働きます。一方、はしご状などのフレームが主に力を受け、上に車体を載せる構成もあります。どちらでも、部材の強さだけでなく接合部の位置やつなぎ方が重要です。強い棒も、つなぎ目が動けば一体の構造として働きません。
ここでいう剛性は、力を受けたときの変形のしにくさ。強度は、壊れたり元に戻らない変形をしたりするまで、どれほどの力に耐えられるかを表します。剛性の高い車体が、あらゆる衝突で安全だと直ちに決まるわけではありません。人の空間を保つ部分と、衝突時に変形してエネルギーを受け持つ部分を組み合わせます。
進化|電池や大きなドアも設計を変える
床下に大きな駆動用電池を置く車では、電池を守る構造、取り付け部、床の高さを一緒に考えます。電池のケースを車体の剛性に生かす設計もありますが、すべてのEVが同じ構造ではありません。屋根の開口やドアの大きさを変えるときも、減った力の通り道をどこで補うかが設計の問いになります。
この図鑑は理解のための順番で構成しています。「解決」は設計の考え方であり、歴史上の発明順序や特定の発明者を示しません。実車の整備・製作手順は扱いません。