MOTORCAR — KNOWLEDGE & TOOLS

第6章 車体をつくる / 33

空気の抵抗はどこで生まれるか

目に見えない空気も、車が進むと押しのけられます。車の後ろにも抵抗の手がかりがあります。

一般的な乗用車の滑らかな外形の挿絵

疑問|前をとがらせれば抵抗は消える?

歩く速さでは気にならない空気も、速く走る車には大きな相手です。先端をとがらせれば、すっと通れそうに見えます。でも空気は車の前だけにあるのではありません。屋根、床下、車輪の周りを通り、最後には車の後ろで再び出会います。その道すじ全体が抵抗に関わります。

問題|後ろに回った空気が乱れる

車の表面に沿う流れが途中ではがれることを剥離といいます。後ろに大きな乱れた流れの領域ができると、後面の圧力が十分に回復せず、前後の圧力差による抵抗が大きくなります。表面で空気がこすれることによる抵抗もあります。前から見える面積だけでも、表面のなめらかさだけでも説明しきれません。

解決|入口から出口まで流れを整える

車体後部の形、床下の段差、車輪周辺の流れなどをまとめて整えます。床下のカバーは、部品の凹凸に流れがぶつかるのを減らす助けになります。後ろを急に絞ると流れがはがれる場合があり、細くすれば必ずよいとは限りません。人や荷物を入れる空間、車体の長さとも折り合いをつけます。

前から後ろまでの空気の道。車に対して空気が左から流れる側面の概念図。後部で剥離する一例です。実際の形状によって剥離位置は変わります。横風、回転する車輪、床下の細部、三次元の渦は省略。線の間隔は速度の値を示しません。
車に対して空気が左から流れる側面の概念図。後部で剥離する一例です。実際の形状によって剥離位置は変わります。横風、回転する車輪、床下の細部、三次元の渦は省略。線の間隔は速度の値を示しません。

仕組み|速度の二乗が効いてくる

空気抵抗の大きさは、簡略化すると「空気の密度×速さの二乗×前面投影面積×空気抵抗係数÷2」で表せます。前面投影面積は正面から見た車の影の面積。空気抵抗係数は形や流れの影響をまとめた値で、Cdとも書きます。Cdが小さくても、面積が大きければ抵抗が小さいとは限りません。

空気密度、姿勢、係数がほぼ同じで、風に対する速さが2倍なら抵抗は約4倍です。さらに、その抵抗に逆らって進むための仕事率は、無風で定速走行する条件なら約8倍になります。これは空気抵抗の分だけの比較で、転がり抵抗や加速などを含む車全体の消費エネルギーが8倍になるという意味ではありません。向かい風では地面に対する速度と空気に対する速度も異なります。

進化|抵抗以外の風の働きも調べる

空気は車を持ち上げる力や押し下げる力、横向きの力も生みます。抵抗を減らすだけでなく、横風や旋回中の姿勢も調べる必要があります。冷却用の入口を必要に応じて開閉する工夫は、熱を逃がす要求と抵抗を減らす要求を調整します。風洞の実験や計算では、車輪の回転や地面との相対運動の扱いも結果に関わります。

この図鑑は理解のための順番で構成しています。「解決」は設計の考え方であり、歴史上の発明順序や特定の発明者を示しません。実車の整備・製作手順は扱いません。

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