MOTORCAR — KNOWLEDGE & TOOLS

第6章 車体をつくる / 34

熱を外へ逃がすには

冷却とは、冷たさを送り込むことではなく、熱の行き先を用意することです。

ラジエーター、冷却ファン、エンジンを結んだ冷却装置の概念挿絵

疑問|走るためのエネルギーは全部動きになる?

エンジンでは燃焼で生まれたエネルギーの一部が回転になり、残りは排気や冷却系などへ熱として出ていきます。モーターも電気をすべて回転に変えられるわけではなく、巻線などで熱が出ます。電池や電力を制御するインバーターにも発熱があります。効率の高い装置でも、冷却が不要になるわけではありません。

問題|熱がたまると何が困る?

温度が上がりすぎると、材料や潤滑油、電気部品が働ける範囲を外れてしまいます。電池は高すぎる温度だけでなく、低すぎる温度でも性能に影響が出ます。しかも、エンジン、電池、モーターは同じ温度を目標にしていません。一台に載っているからといって、すべてを一つの水路で同じように冷やせばよいとは限らないのです。

解決|熱を運ぶ役と捨てる役を分ける

液体で冷やす方式では、冷却液が部品から熱を受け取り、ポンプで循環します。ラジエーターは、その熱を外気へ渡す熱交換器です。細い通路や薄いひれ状のフィンで空気と接する面積を増やします。熱い場所から離れたところでも、十分な空気に熱を渡せるようになります。空気で直接冷やす部品もあり、方式は用途によって異なります。

冷却液が運び、外気へ渡す。液冷方式の単一回路を示す機能図。赤は熱を受けた液、青は熱を渡した液の経路で、絶対温度は示しません。実際の配置、弁、リザーバー、暖房回路は省略。エンジン・モーター・電池が同一回路という意味ではありません。
液冷方式の単一回路を示す機能図。赤は熱を受けた液、青は熱を渡した液の経路で、絶対温度は示しません。実際の配置、弁、リザーバー、暖房回路は省略。エンジン・モーター・電池が同一回路という意味ではありません。

仕組み|熱は温度差を使って移動する

熱は部品の内部を伝導で移動し、冷却液や空気の流れが熱を運びます。熱を持つ物体から電磁波として外へ出る放射もあります。ラジエーターでは、液体から金属の壁を経て空気へ熱が渡ります。液体と空気が混ざっているわけではありません。外気との温度差や流量、伝熱面積などが、熱の渡しやすさに影響します。

走行風が少ないときは、ファンで空気を流して助けます。液体側ではポンプや弁で流れを調整します。サーモスタットは温度に応じて流路を変える装置で、冷えている間の暖まりやすさにも関わります。熱を逃がす能力だけでなく、適温に早く達し、保つことも冷却系の仕事です。

進化|冷やす、暖める、再利用する

EVの電池では、必要に応じて空調用の冷媒回路を介して冷却液を冷やしたり、低温時に加熱したりする構成があります。ヒートポンプは、仕事を加えて低温側から高温側へ熱を移す仕組みで、外気だけへ自然に熱を逃がす回路とは違います。部品の排熱を暖房に使うなど、車全体の熱を融通する設計もあります。回路の組み方は車ごとに異なります。

この図鑑は理解のための順番で構成しています。「解決」は設計の考え方であり、歴史上の発明順序や特定の発明者を示しません。実車の整備・製作手順は扱いません。

第6章・34 / 48