第6章 車体をつくる / 35
音と振動はどう伝わるか
聞こえる場所と、音が生まれる場所は同じとは限りません。静かさをつくるには、伝わる道を探します。

疑問|床が揺れると、なぜ耳にも届く?
粗い道路ではゴーッという音と細かな振動を感じます。タイヤの近くで生まれた振動が、なぜ離れた座席や耳へ届くのでしょう。振動は物体が行ったり来たりする動きです。音は、空気などの圧力の変化が波として伝わる現象。両者は別々のものとして終わらず、途中で姿を変えてつながります。
問題|空気の道と、固体の道がある
タイヤや動力装置から出た音が、空気を通って車室へ入る経路があります。一方、振動が足まわりや取り付け部から車体へ伝わり、床や壁を揺らして、そこで音を出す経路もあります。後者は固体伝搬音と呼ばれます。耳の近くの内装だけを厚くしても、元の振動や別の経路が残れば十分な効果は得られません。
解決|発生源・経路・受け手で考える
まず回転する部品のつり合いや歯車のかみ合いなど、振動を生む側を整えます。次にゴムなどの取り付け部で伝わり方を調整し、車体の板には振動を弱める材料を組み合わせます。さらに音を通しにくい壁や、音のエネルギーを吸収する材料を使います。音を遮る遮音と、反射する音を減らす吸音は同じ働きではありません。
仕組み|柔らかく支えるだけでは決まらない
ゴムなどで支えた部品には、揺れやすい固有の振動数があります。外から繰り返し押す速さがそれに近いと、共振によって揺れが大きくなることがあります。取り付け部を柔らかくすると、一部の高い振動数の振動は伝わりにくくできますが、大きな動きを許したり、別の条件で揺れを増やしたりもします。支える重さ、硬さ、揺れを減らす性質を一緒に調整します。
制振材は、板が曲がるときなどの変形を利用して振動エネルギーを熱へ変え、揺れが続くのを抑えます。吸音材は内部の細かな空気の動きなどを利用します。どちらも苦手な音の高さや条件があります。すき間から音が回り込むこともあるため、材料の厚さだけで車室全体の静かさは決まりません。
進化|静かな動力でも別の音が目立つ
EVでもタイヤ、風、減速歯車やモーターなどから音や振動が生じます。エンジン音が小さくなることで、以前は隠れていた音が目立つ場合があります。マイクやスピーカーで打ち消し合う音をつくる能動的な制御もありますが、得意な周波数や効く場所には限りがあります。静かさは音量だけでなく、不快なうなりや細かな振動の感じ方まで含めて調整されます。
この図鑑は理解のための順番で構成しています。「解決」は設計の考え方であり、歴史上の発明順序や特定の発明者を示しません。実車の整備・製作手順は扱いません。