MOTORCAR — KNOWLEDGE & TOOLS

第6章 車体をつくる / 36

人が乗り降りしやすい形とは

大きなドアだけでは、乗りやすい車は完成しません。人の体が通る道を、動きの途中まで考えます。

乗員が乗り降りする姿と車内の部品配置を示す概念挿絵

疑問|座れれば、乗りやすい?

座席に収まることと、そこまで楽に移動できることは違います。乗り込む人は、足を入れ、腰を移し、頭を通し、体の向きを変えます。背の高さや関節の動かしやすさ、抱える荷物によっても動きは変わります。車内の広さを一つの長さだけで表せない理由が、ここにあります。

問題|低くても高くても難しくなる

座面が低いと、腰を深く下ろし、降りるときに立ち上がる動きが大きくなります。高いと、座面に体を持ち上げたり、足を大きく上げたりする必要があります。床やドア下の骨が高いと足を越えさせにくく、屋根の端が近いと頭を避けるために上体を曲げます。ある人に楽な高さが、別の人にも楽とは限りません。

解決|人の動く空間を先に確かめる

車の設計でいうパッケージングは、人、荷物、機械を限られた空間へ配置することです。座ったときだけでなく、乗り降りする途中の頭、腰、足の通る範囲を調べます。ドアの開口形状、座面の位置、床の段差、つかまりやすい場所を組み合わせて考えます。体格の異なる人の模型やデジタルの人体モデル、実物大の模型などが検討に役立ちます。

乗り込む途中の空間。側面から見た乗り込み動作の概念図。頭・腰・足の通過位置を模式的に示し、実際には横方向への移動と体の回転もあります。ドア、反対側の車体、個人ごとの可動範囲は省略。推奨寸法や万人共通の動作を示しません。
側面から見た乗り込み動作の概念図。頭・腰・足の通過位置を模式的に示し、実際には横方向への移動と体の回転もあります。ドア、反対側の車体、個人ごとの可動範囲は省略。推奨寸法や万人共通の動作を示しません。

仕組み|開口と座席の位置を組み合わせる

座席の高さを表す手がかりに、腰の関節付近を代表するヒップポイントがあります。床からの高さだけでなく、地面やドア開口との位置関係が大切です。ドアが大きく開いても、座面が奥へ離れていれば腰を大きく横へ移す必要があります。逆に座面を外へ寄せれば、側面の構造やドアとの間隔を見直さなければなりません。

横へ回るドアは、隣の車との距離によって開けられる角度が変わります。スライドドアは横の張り出しを抑えやすい一方、移動するドアやレールを収める場所が必要です。大きな開口は便利ですが、周囲の骨組みで車体を支える仕事も残ります。乗りやすさ、車体の強さ、重さは一緒に設計する課題です。

進化|電池の場所から乗り方までつながる

床下に駆動用電池を置くと、車内の床形状を整理できる場合がありますが、電池や保護構造の厚みが床の高さにも影響します。座席や屋根だけでなく車全体の配置から考える必要があります。乗り降りを助ける回転座席や昇降機構、車いすでの利用を考えた構成など、目指す使い方によって答えは変わります。機構ごとの対応条件や必要空間の確認が欠かせません。

この図鑑は理解のための順番で構成しています。「解決」は設計の考え方であり、歴史上の発明順序や特定の発明者を示しません。実車の整備・製作手順は扱いません。

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