第7章 電気と判断 / 37
車の電気はどこを流れるか
ライトまで届いた電気には、帰り道も必要です。車の中に、目に見えない往復の道を探しましょう。
疑問|電池から線を一本つなげば光る?
電池とランプを一本の線で結ぶだけでは、通常は光り続けません。電池の二つの端子を、ランプを通る道で結び、ぐるりと一周できる必要があります。この閉じた道を「回路」と呼びます。電気がランプの中でなくなるのではなく、電気のエネルギーが光や熱に変わります。
車にはライト、送風機、コンピューターなど、電気を使う仲間がたくさんいます。それぞれにエネルギーを届け、必要なときだけ働かせる道路網が、配線です。
問題|どこにでも流れてよいわけではない
電圧は、電流を流そうとする電位の差。電流は、電荷が移動する量を時間あたりで表したものです。同じ電圧でも、つながる機器や回路の抵抗によって電流は変わります。線にも抵抗があり、大きすぎる電流が流れると発熱します。
もし機器を通らず、電源の両端が小さな抵抗でつながったらどうなるでしょう。これが短絡、いわゆるショートです。電流が大きくなり、配線などを傷めるおそれがあります。「電気が通れば成功」ではなく、決めた道を適切な量が流れることが大切です。
解決|枝分かれと、道を守る仕組み
機器ごとに枝分かれした回路を用意すれば、ランプを消しても別の機器を使えます。ヒューズは、過大な電流が一定の条件で流れると内部が溶けて回路を切り、主に配線を保護する部品です。すべての故障や感電を防ぐ万能な装置ではありません。
小さな操作スイッチで、大きな電流を直接扱わずに済む工夫もあります。リレーという電気で動くスイッチや、半導体のスイッチを使って、機器へ送る電力を切り替えます。
仕組み|帰り道に車体を使うこともある
多くの車の低電圧系では、電池のマイナス端子を金属の車体につなぎ、車体を戻りの導体として利用します。この接続を車体アースと呼びます。地面へ電気を捨てる意味ではありません。専用の線で戻す回路もあり、接続が悪ければ戻り道でも電圧が失われます。
エンジン車では一般に発電機が低電圧系へ電力を供給し、電池を充電します。EVでは駆動用電池から、DC-DCコンバーターという直流の電圧を変える装置を通して低電圧系へ供給する構成があります。エンジン、発電機、車輪を回すモーターは、それぞれ役割を分けて考えます。
進化|電力の道と情報の道を整理する
EVなどの駆動用の高電圧系は、低電圧系とは別の保護や絶縁を備えます。高電圧系の戻り道まで車体だと思い込んではいけません。また、機器を動かす電力の配線とは別に、命令や測定値を運ぶ通信線があります。通信線がモーターの動力を丸ごと運ぶわけではありません。
車内の近い場所に電力の分配や通信の中継をまとめるなど、配線を整理する設計もあります。線を減らす工夫と、故障時にも必要な機能を保つ工夫を一緒に考えるのです。一本の線の先にも、エネルギーと情報という二つの役割が見えてきます。