MOTORCAR — KNOWLEDGE & TOOLS

第7章 電気と判断 / 38

センサーは何を測るか

車は「熱い」「速い」「近い」を、そのまま感じるわけではありません。まず、計算できる信号に変えます。

疑問|車輪が速く回ったと、なぜ分かる?

人は窓の外の景色から速さを感じます。でも車のコンピューターには、その感覚はありません。車輪の回転や冷却液の温度など、知りたい状態を電気信号に変える部品が必要です。それがセンサーです。

センサーは何でも分かる目玉ではありません。どんな物理量を、どんな範囲で測れるのかが決まっています。「何を直接測り、何を計算で求めたか」を分けると、車の判断が見えてきます。

問題|知りたいことを、そのまま測れるとは限らない

車輪の回転速度が分かっても、車体の地面に対する速さが必ず分かるわけではありません。タイヤが空転したり、滑りながら止まったりする場合があるからです。タイヤの有効な転がり半径も結果に影響します。

測定には誤差と遅れがあります。誤差は真の値とのずれ、遅れは変化を信号に反映するまでの時間です。温度センサーも、取り付けた場所の温度を時間をかけて捉えます。一か所の値だけで、車のすべての部分の温度が分かるわけではありません。

解決|変化を数えやすい形へ変える

車輪速センサーの一例では、車輪とともに回る検出用の輪がつくる磁気の変化を読み取ります。変化が繰り返されるたびに信号が出れば、その回数と時間から回転の速さを求められます。信号の繰り返しを数えるのは、通過する電車の車両を数えるのに少し似ています。

温度センサーには、温度によって電気抵抗が変わる素子を使うものがあります。抵抗の変化を回路で電圧などに変え、あらかじめ分かっている特性と照らして温度を求めます。回転を測る仕組みを、そのまま温度に使うのではありません。

検出用の輪の回転をパルスに変える例。同じ時間で速い回転ほど信号の山が多く、間隔が短い。
磁気変化を利用する回転検出の概念図。信号は読みやすい矩形に模式化し、実際の電圧や歯数、回路は省略しています。同じ検出用の輪を比較する条件です。すべての回転センサーがこの形の信号を直接出すわけではありません。

仕組み|受け取った信号から意味を取り出す

コンピューターは信号を一定の間隔で読み、必要に応じて雑音を減らし、単位のある数値に直します。これを人の体にたとえるなら、耳に届く振動と、聞き取った言葉の違いです。ただし強く平均しすぎると、急な変化を捉えるのが遅くなります。

周囲を見る装置でも、カメラは光の像を、レーダーは電波の反射を利用します。レーダーでは反射の時間や周波数の変化などから距離や相対速度を求めます。カメラ画像に「歩行者」という文字が入っているわけではなく、形や動きから対象を推定する処理が続きます。

進化|違う得意技を照らし合わせる

複数のセンサーを組み合わせて状態を推定することを、センサーフュージョンと呼びます。車輪の回転と車体の加速度、カメラとレーダーなど、異なる手がかりを照らし合わせます。一つの苦手を別の手がかりで補える可能性があります。

それでも、雨、雪、汚れ、遮られた視野などの影響は残ります。値がもっともらしくても正しいとは限らず、信号の途切れや他の値との矛盾を調べる診断も必要です。よい測定とは、数字を出すだけでなく、その数字をどこまで信頼できるか考えることなのです。

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