MOTORCAR — KNOWLEDGE & TOOLS

第7章 電気と判断 / 39

コンピューターはどう機械を動かすか

計算ができても、数字だけではファンは回りません。命令を力へ変え、その結果を確かめる仕組みが必要です。

疑問|「もっと冷やして」を誰が実行する?

車が熱くなったとき、コンピューターが温度を読み取るだけでは冷えません。風を送るファンや、流れを変える弁などが実際に働く必要があります。電気の命令を受けて機械的な動きをつくる装置を「アクチュエーター」と呼びます。

モーターで回るファンはその一例です。コンピューターは何をどれだけ動かすかを決め、別の回路が必要な電力を送り、モーターが回転をつくります。計算する部分と、力を出す部分は役割が違います。

問題|同じ命令でも、結果は変わる

暑い日と寒い日、停車中と走行中では、同じようにファンを回しても温度の変わり方が違います。外気や走行風、発生する熱の量が変わるからです。「いつも同じ時間だけ動かす」という方法では、冷やしすぎたり足りなかったりします。

さらに、命令してから結果が出るまでには時間がかかります。熱いからと急に強め、冷えたらすぐ弱めることを乱暴に繰り返すと、温度や作動が落ち着かなくなることがあります。変化の速さまで見込む必要があるのです。

解決|目標と実測の差を見直す

目標の状態を決め、測った値との差に応じて働き方を調整します。そして変わった結果をもう一度測ります。このように結果を戻して調整する方法が「フィードバック制御」です。人がシャワーの温度を確かめながら蛇口を調整する行動に似ています。

実際の制御では、差の大きさだけでなく、変化の傾向や作動の上限も考えます。温度の目標自体を運転状態に応じて変えることもあります。必ず一つの温度をぴったり守る、という意味ではありません。

目標温度をコンピューターが実測と比較し、駆動回路を介してファンへ指令を出す。変化した温度をセンサーが測り、比較へ戻す。
電動冷却ファンを用いる場合の情報の流れの概念図です。温度目標の決め方、冷却液の流路、電源、他の冷却装置は省略。実車の制御則や配線図ではありません。

仕組み|小さな信号が大きな仕事につながる

車載コンピューターはECU、電子制御ユニットとも呼ばれます。プログラムに従ってセンサーの値や操作要求を読み、指令を計算します。多くの場合、演算用の端子からモーターの大電流を直接流すのではなく、半導体などを使う駆動回路が電力を調節します。

直流モーターなどの出力を調節する方法にPWMがあります。電源を短い周期で入れたり切ったりし、その周期のうち「入」の時間の割合を変える方法です。ただし車輪を回す交流モーターでは、インバーターが必要な電流の大きさや位相などを制御します。どのモーターも単に同じスイッチを速く押せばよい、とはいえません。

また、エンジンでは燃料噴射や点火などを制御し、燃焼による力を調節します。回転を伝える歯車や軸は伝達系です。コンピューターの命令が直接タイヤを押すのではなく、その間にエネルギーを変え、力を伝える機械があります。

進化|一つの装置より、一台全体を考える

複数のECUが通信すると、別々の機能が同じ測定値を利用し、働き方を相談できます。たとえば加速の要求があっても、タイヤが空転しそうなら駆動力を抑える調整が必要です。電力や温度にも限界があり、すべての要求を同時に最大にはできません。

故障が疑われるときには、機能を制限したり、警告したりする設計もあります。代わりの値で動かし続けられるか、停止すべきかは機能ごとに違います。賢い制御には、うまく動かす計算と同じくらい、分からなくなったときの振る舞いが重要です。

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